丸の内の成熟した賑わい
2014年10月10日から12日まで、丸の内仲通りと行幸通りを会場に「東京味わいフェスタ」が開催されていた。2020年のオリンピック開催を意識し、東京都が東京の魅力を内外にアピールしようとの目的でコーディネートしたイベントとのこと。東京は大消費地だが、農地もあって近郊農業や畜産が営まれており、東京湾では江戸前の魚が採れ、伊豆諸島や小笠原では地域色豊かな物産が出荷されている。伝統ある工芸品の生産も健在である。そこにスポットをあて、東京産の野菜や畜産品、加工食品、地酒、伝統工芸品などを販売するマルシェを開催する一方、有名シェフが東京産の食材を使った特別メニューを提供するキッチンカーも繰り出し、人気を集めていた。さらに会場のあちこちで大道芸人のストリートパフォーマンスが演じられてイベントを盛り上げ、賑わいを演出していた。
しかし、押すな押すなの大混雑を呈するわけではなく、ヨーロッパなどに見られる成熟社会の街角のように、人口密度もそこそこで、いわば“ちょうど良い程度の”賑わいになっているところが丸の内流である。赤レンガの東京駅や、宣伝色の目立たない落ち着いたビル街の佇まいが、その雰囲気づくりに貢献している。成熟社会、つまり大人が主役の社会の賑わいとはこういうものなのだろうな、と思わせてくれる。浅草、渋谷・原宿、銀座、秋葉原など、それぞれ個性ある賑わいを創造して人気を博しているエリアに加え、丸の内もまた新たな個性をもった人気エリアとして台頭し、多様性のある東京の魅力を高めているようである。
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