巨大な獅子が街をゆく
2009年6月10日から14日まで、築地の波除稲荷神社で、夏の大祭「つきじ獅子祭」が催された。獅子頭を神輿のように担いで練り歩くことで知られる祭りである。
波除稲荷神社は、同社によれば江戸時代の萬治2年(1659)、築地の埋立工事のさなか波間に突如現れた稲荷大神を祀ったことに始まる。すると、荒天荒波がただちに鎮まり工事が無事に完成したという。人々は、龍や虎、獅子頭などの飾り物を奉納し、皆で担ぎあって祝った。それが「つきじ獅子祭」の起源らしい。ごく近い佃島の住吉神社例大祭(8月の佃祭)でも同様に獅子頭を担ぐ。このあたりの海に関わりのある人々は、一般に見られる獅子舞のように、獅子頭を厄除けの縁起物のように考えていたのではと想像する。
「つきじ獅子祭」は、江戸から明治、大正にかけ、氏子各町の獅子頭が多数参加して盛んに行われたが、関東大震災(1923)ですべて失われた。唯一焼失を免れたのが、社宝として保存されている嘉永元年(1848)製作の金獅子(写真下左)だという話である。
その後、獅子祭としてのにぎわいが戻ったのは比較的新しく、1990年に雄の「厄除天井大獅子」(写真3番目)が奉納され、1997年の祭礼で巡行が行われてからである。さらに2002年には、雌の「弁財天お歯黒獅子」(写真2番目)が奉納されて女性の手で担がれるようになり、以来、3年に1度の本祭には、神社神輿、雄獅子、雌獅子のいずれか2基、間の陰祭では、いずれか1基が繰り出されるようになったという。
このサイクルでいくと今年2009年は陰祭だが、何と神社の御鎮座350年という記念の年に当たる。14日の日曜日には、「復活江戸の祭り」と銘打って、雄獅子、雌獅子に加えて社宝の金獅子、さらに各町会の獅子頭も加わり、一斉に築地の町を練り歩く…これは見なくては! ということで、朝8時過ぎから始まる各町獅子頭の巡行(写真上)に間に合うように現地へ。日曜日の築地、人出は思ったほどではなかったが、巨大な獅子頭の巡行はなかなか見ごたえのあるものであった。神社神輿の渡御はなく、公開だけされていた(写真下右)。今後、御鎮座350年記念行事の一環として、龍と虎の神輿も復活するらしい。2011年の本祭は一段と盛り上がりそうである。
なお、大獅子は普段、境内の専用の社殿に祀られていて自由に拝観できる。築地場外市場に買物の折に、厄除を祈願してはいかがだろう。
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