無料バスで
ミュージアムめぐり
2015年2月、港区では区内の美術館・博物館などの利用を促す「ミナコレ(みなとコレクション)」というイベントがあった。毎年この季節と、学校の夏休み期間に実施されるイベントで、昨夏はスタンプラリー形式でオリジナルグッズがもらえる促進策が、この冬は東京タワーを起点に各施設が集中する7カ所に臨時バス停を設け、土日祝日限定で「ミナコレぐるぐる号」という無料巡回バスを運行する促進策が企画された。
この無料バス、いいね! と思ったが、コースをひと回りすると約1時間半かかり、意外と時間を食う。おまけに、どこにあるのかわかりにくいバス停があり、見つけるのに一苦労する。さらに、バス停を降りて施設に行こうとすると恐ろしく距離があったり、道順がわかりにくかったりして、またまた時間がかかる。バスの運行は10時から17時くらいまでの35分おき、施設の閉館時間も17時あたりが多いので、第一便に乗っても1日に訪ねることができるのはせいぜい2か所だ。もしお目当ての施設に早く着きたいなら、地下鉄などを使ったほうが便利だろう。このバスを利用する楽しさは、実は普段通らない街並みを車窓から眺めたり、バス停から目的地までちょっと不安を感じながら見知らぬ道を歩き回り、ささやかな新しい発見をすることにあるのだ、と一人納得するのであった。
ということで、今回はあえて場所がわかりにくい「畠山記念館」(茶の湯の美術館といわれる=写真中)をたずね、尾形光琳や尾形乾山の書画や茶器を拝観、さらにもう1カ所、かなりマニアックな「物流博物館」(日本で唯一といわれる=写真下)を見学して、なじみの薄い世界に出会ってきた。前者は荏原製作所の創業者、後者は日本通運が設立に深く関わっており、美術館や博物館にはそうした事業者の社会貢献の例が案外多いということに改めて気づく。その意味で、時代の最先端を行くIT企業などが、将来どのような文化的価値を世の中に残していくのかが楽しみでもある。
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