大祭に江戸の町人気質を見る
5月の大型連休の疲れも取れないうちに、神田明神(神田神社)の祭りが始まった。江戸城の鬼門の方角を守る神田明神、裏鬼門の方角を守る日枝神社、それぞれの大祭である「神田祭」「山王祭」は神輿や山車の行列が江戸城内に入ることを許され、代々の将軍も楽しんだことから「天下祭」と称される。これに富岡八幡宮の深川祭を加えて「江戸三大祭」というそうだ。
2つの天下祭は盛大な「本祭」が1年おきに交互に開催される。今年2015年は神田祭が本祭で、神田神社が大手町(平将門の首塚あたり)から現在地に遷座して400年を祝う記念の祭ということもあり、ひときわ力が入っていた。5月7日から15日まで続く祭礼スケジュールの中でも中心となるのは、9日土曜日、神田神社に祀られる三柱の神様が乗った鳳輦(ほうれん)と神輿が長い行列を従えて氏子町内を巡行する神幸祭(写真上)と、10日日曜日の各町の神輿の宮入だ。神幸祭では沿道でたくさんの観衆が大行列を見守り、神輿の宮入では神社の境内がおびただしい数の見物客でごった返していた(写真下)。
神田祭と山王祭、同じ天下祭でも印象はちょっと違う。山王祭が様式や格式を重視しているようにみえるのに対し、神田祭は、氏子地域が町人文化が栄えた神田や日本橋であるためか、より庶民的かつ自由でエネルギッシュである。それを象徴するのが、神幸祭の行列に、江戸の昔から「附け祭」と呼ばれる賑やかな仮装行列が附いて回ったこと。近年はそれを再現しようという動きが活発で、今回も、鬼の首や地震封じのナマズの造り物を乗せた山車や(写真2段目)大道芸を披露する人々、浦島太郎や花咲爺さんなどのおとぎ話をモチーフにした行列(写真3段目)が延々と続き、観衆を楽しませていた。
神田祭に参加する神輿は、子供神輿も含めて200を数えるそうだが、この週末、神田・日本橋一体は、どこに行っても活気ある神輿の渡御やお囃子の演奏に出会い、祭り一色の空間になっていた。本当にお疲れ様である。
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