花まつりの日
2009年4月8日、芝の増上寺で、恒例の「花まつり」(灌仏会:かんぶつえ)が開催された。釈迦の誕生日を祝う行事である。
大殿前広場に、片手で天、片手で地を指す釈迦像と、色とりどりの花で飾られた御堂が置かれる。御堂の内側は甘茶を満たした灌仏桶で、小さな釈迦像が立っている。釈迦が花園で生まれ産湯をつかった場面を再現するもので、甘茶というのは、誕生の際に天に龍が現われ香ばしい水を吐き産湯に使わせたという伝説から来ている。
僧侶たちが入場し、雅楽が演奏される中、増上寺内の明徳幼稚園の園児たちが順番に、桶の甘茶をヒシャクで汲んで釈迦像に頭から注ぎ、拝む。参詣客も含めて皆で念仏を唱え、法話を聞く。その後、参詣客も釈迦像に甘茶をかけて拝み、希望者には甘茶がふるまわれる。甘茶は、アマチャヅルとカンゾウという2種類の薬草で作られているとのことで、砂糖が入っているかと思うくらいの甘味があった。
春の季語にもなっている「花祭り」は、もともとは浄土宗が明治時代に命名したもので、他の宗派にも普及し、一般的になったという。増上寺は浄土宗の東の大本山であるから、花まつりの本家だ。皆で合掌し南無阿弥陀仏を唱えるうちに、自然と敬虔な気分になってくる。
ただ全体的には、明徳幼稚園の行事のような印象を受けた。ちょうどミッション・スクールにとってのクリスマスと同様の意味合いを持つのだろう。境内の桜も散り始め、いよいよ新年度が本格的に始まる。
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