海の恵みにふれる大学祭
2016年も秋が深まり、文化・スポーツ等の様々なイベントが開かれている。学園祭が多いのもこの時期だ。社会に出てしばらくすると、似たり寄ったりの企画に何の面白さも感じなくなるが、中には興味をひかれるところもある。たとえば、特定の専門分野で実績があったり、貴重な文化遺産などを特別公開するような学校である。JR品川駅から徒歩10分、東京海洋大学品川キャンパスの「海鷹祭(うみたかさい)」は、この2つの要素を兼ね備えた大学祭の1つと言えるかもしれない。
東京海洋大学は、東京商船大学と東京水産大学が統合してできた大学で、この品川キャンパスの前身は東京水産大学。資源や環境としての海を知り、守り、有効利用する知恵を専門的に学ぶ学生が集う。大学祭の名称は、所有する練習船・調査船「海鷹丸」にちなむと思われる。
今年の海鷹祭は、11月4日から6日まで開催されており、6日の日曜に訪ねてみた。ずらり並んだ模擬店や特設会場で「海の幸」が豊富に提供されるのが特徴で、目玉企画として定着しているマグロの解体実演、そのネタを使用したマグロ丼やブツの販売に長蛇の列ができていたほか、カニやタイなど、おなじみの食材をはじめ、クジラやウミガメ(?)など、あまり食するチャンスのない食材を使ったメニューも注目を集めていた。施設関連では、クジラの全身骨格標本を展示した「鯨ギャラリー」(写真下左)、さまざまな海洋生物の貴重な標本や模型がみられる「マリンサイエンスミュージアム」が、普段は公開していない日曜日も開いていた。キャンパスには、明治の終わりから昭和の初めにかけて練習船・調査船として活躍し、船内でカニの缶詰加工を行う「蟹工船」のモデルともなった「雲鷹丸(うんようまる=写真下右)」が国の登録有形文化財として陸上保存されているが、この日は特別公開として、甲板に登って見学できたのも良い経験だった。
一般的な認知度は高いとはいえないが、旧東京商船大学の越中島キャンパスも含め、実際に訪れて活動の一端にふれてみると、本当に存在意義の大きい大学であり、えらく実習がきつそうなこの大学で学ぼうという学生の意思もまたすごい、と改めて感じるのである。
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