人形町の人形市
小さい頃から玩具として与えられることが多いせいか、女性は一般に人形が好きらしい。買い集めるだけでなく、自ら人形作りを楽しむ女性が知り合いの中にもいる。だが、女性の専売特許かといえばそうでもない。現代の日本の男児は人間の形をしたロボット玩具で遊び、一部の大人もガンダムプラモや美少女フィギュアを愛玩する。最先端のロボット技術者たちも、天馬博士がアトムを創ったように、二足歩行をし、表情までも人間そっくりのアンドロイドの開発に執念を燃やす。あれは究極の人形作りではないかと思うのだ。
こんな話になったのは、日本橋人形町の「人形市」に出かけてきたからである。もともと人形町の名は、江戸時代に人形芝居の小屋が立ち、人形師が多く住むようになったことに由来するという。この人形市は、それにちなんだ商店街の活性化策と思われ、2006年から始まった。今年2011年は10月13日から15日まで行われ、地下鉄水天宮駅から小伝馬町駅までの人形町通りに57のテントが並び、老舗の人形店や個性的なショップ、創作人形のアーティストなどが各地から出店していた。さすがに工場量産品は少なく、手づくり工芸品的な品物が中心になっているのがこの市の良いところ。人形ファンにはきっと楽しいことだろう。
だが可愛い、楽しいばかりではないのも人形の特性である。そもそも古くは「ひとがた」といい、宗教的な儀式に盛んに用いられたものだ。ミステリー小説などにもしばしば登場し、その存在に不気味さを感じるのは、DNAの中に祖先のあやしい儀式の記憶でも残っているからだろうか。
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