おどりゃ心も丸の内
2009年8月21日・22日、「第7回日比谷公園丸の内音頭大盆踊り大会」が開催された。東京周辺での盆踊りでは必ずといってよいほど「東京音頭」が踊られるが、ここでは「丸の内音頭」が主役である。
「ハアー 踊り踊るなら 丸くなって踊れ おどりゃ心も おどりゃ心も丸の内 ヤットナ ソレ ヨイヨイヨイ」という詞の丸の内音頭は、昭和7年(1932)に誕生した。当時の日本は世界恐慌によって不況にあえいでおり、同年5月15日には犬養毅首相が暗殺されるといった衝撃的な事件も起きている。この暗い世の中を少しでも元気づけようと、日比谷・丸の内界隈の商店主が、作詞を西条八十氏、作曲を中山晋平氏に依頼して作ってもらったのが「丸の内音頭」であった。
「これはよい」というムードが業界内に高まったのだろう、翌年、全く同じ曲に、歌詞だけをより多くの人にわかるように変えた「東京音頭」ができ、レコード化されて爆発的に売れ、瞬く間に日本中に知られるようになった。その陰で、元歌の「丸の内音頭」は忘れられていったのである。
その復活のきっかけは、2003年に日比谷公園が開園100周年を迎えたことにあった。日比谷松本楼など日比谷公園に店を構える商店会が開園100周年記念事業として71年ぶりの「丸の内音頭」の盆踊りを思いつき、関係各方面に働きかけて実現したらしいのだ。記念すべき第1回は大雨で大変だったそうだが、年々参加者も増え、1日当たり2万人以上が楽しむ大きな大会に育っている。今年も大噴水を囲んで3重にも4重にも踊りの輪が広がり、さらに芝生広場には近隣企業・団体の模擬店も多数出て、踊る人数を上回る人々が都心のお祭り気分をエンジョイしていた。また、丸の内音頭の歌詞が印刷された手ぬぐい(写真右上)を1本300円で求めると抽選会に参加できる企画も楽しませた。帝国ホテルや丸の内ホテルの食事券をはじめ、結構当たり本数はあったのだが、くじ運の悪い私は今回もカスリもせず。まあ、運はこれからの人生にとっておくことにしよう。
昭和7年当時の不況とは状況が違うだろうが、現在も「未曾有」の不況の真只中である。祭りや踊りで元気を出すのも良いものだ。ひょっとすると、定額給付金やエコポイントに勝るとも劣らない景気浮揚効果が期待できるかもしれない。
CONTENTS