皇居・乾通りの特別な春
2014年4月4日から8日まで、天皇陛下の傘寿を記念して皇居・乾(いぬい)通りの一般公開が行われた。公開されたのは坂下門から乾門に至る750mのルート。皇居を見学する機会としては「一般参観」があるが、今回はそのコースにも入っていない乾門や西桔橋(にしはねばし)門を経て皇居東御苑に抜けるルートが、ちょうど桜の時期に合わせて初の公開、しかも一般参観と違って事前予約なし、人数制限なしというハードルの低さに加えて、天候のほうもまずまず、ということで入場者数が爆発的に伸びた。報道によると、初日の4日は平日にもかかわらず5万人以上、翌土曜日は9万人を超え、期間中の合計は38万5000人に達したという。1日平均7万7000人はすごい。「二度とないかもしれない機会、行くのは今でしょ!」という思いが、人々を突き動かしたのかもしれない。
訪れたのは初日、開場時間の10時を少し回った頃。朝方はやや不安定な天候だったが、入口の坂下門前には、すでに入場待ちの大きな列ができていた。手荷物検査やボディチェックのところで大渋滞である。幸い手ぶらで来ていたので、圧倒的に人数の少ない手荷物検査なしの窓口に並ぶことができ、何とか20分待ち程度で入場できたのはラッキーだった。
ちょっとしたワクワク感と共に歩く道筋、初めて表側から望む富士見櫓(写真上左)や富士見多聞(右)の凛々しさ、苔むした石垣、緑に溶け込むように歴史を刻む日本建築。その質素なたたずまいと、淡い桜の花の美しいコントラストに心打たれる。一方通行の出口となった乾門(写真下)は、いつもなら固く閉ざされ、皇宮警察の警備の姿しか見えないひっそりした門だが、表情を一変し、大勢の人々でごった返していた。添乗員の旗のもとに集合するツアー客も数多く、今回の一般公開を巧みに取り込んだ旅行会社の対応の早さにも感心させられた次第。
この乾通りの一般公開は、11月下旬から12月上旬の時期にも行われるとか。紅葉に彩られ、また違った美しさを楽しませてくれることだろう。
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