麻布十番商店街の豆まき
麻布十番の節分イベントには「鬼」がいるが、豆まきの掛け声に「鬼は外」がない。赤と緑(青)の鬼に扮するのは、商店街の店主や若旦那たちである。そしてこの鬼たちは、港七福神のひとつであり「大黒さま」とも呼ばれる大法寺によって法華経に改心している設定なのだという。だから掛け声に「鬼は外」がなく、「福は内、福は内、福は内…」の連呼となる。鬼たちの役割は、集まった子供たちの記念写真に入り、山車のパレードに同行してイベントを盛り上げることである。
300年の歴史を持ち、江戸時代に開業して現在も営業中の老舗が10店舗、明治・大正開業の店舗も数多く残る麻布十番の商店街は、節分をはじめ、花まつり、納涼祭り、秋祭り、酉の市など季節感ある伝統行事を商店街一体となって熱心に行なっている。また、フリーペーパー『十番だより』は、1957年創刊以来きちんと毎月発行され続け、手にした最新号には659号とある。ひとつの商店街としてしっかりと機能しているように見える。
そんな麻布十番の節分イベントは、鬼を改心させた大法寺の境内で始まり、追儺式祈祷法要のあと、境内で豆がまかれる(写真上)。続いて、商店街に山車が繰り出され、山車の舞台からの盛大な豆まきが合計5箇所で実施される(写真中)。交通量の多い麻布十番大通りを通行止めにして行なうところに、商店街の本気さが感じられる。
どの豆まきのときも、山車を取り囲む子供たちは持参した袋を大きく広げ、飛んでくる豆や菓子を受け止めようと身体を乗り出す。その中のキャラメルに「大当り」のシールが貼ってあれば福袋がもらえるという楽しみがあるのだ。2010年の節分の日、東京はたいへん寒かったが、100人は超えていたと思われる子供たちは、元気に鬼たちと遊び、豆を受け止めていた。
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